第8章 複雑グラフ上のGNN
はじめに
これまでの章では,1種類のノードと1種類のエッジのみを持った時間的に変化しない単純グラフ(simple graph)を対象としたグラフニューラルネットワークについて議論してきた. しかしながら,実用面での応用に際して扱う多くのグラフは,「複数の種類のノードやエッジを持ったり,固有の構造を有していたり,時間的に変化したり」といったはるかに複雑なものである. 結果として,これらの複雑グラフは,先述した単純グラフに対するGNNモデルでは捉えきれない,より複雑なパターンを持つことになる. そのため,複雑グラフ向けのGNNモデルを設計するための専門的な取り組みが望まれている. これらの取り組みにより,GNNはより幅広い応用範囲での成功に大きく貢献できるようになる.
本章では,2.6節で紹介した複雑グラフを例にGNNモデルを拡張し,より洗練されたパターンを捉えるための方法について議論する. 具体的には,複雑グラフの特性を捉えるために設計されたより高度なグラフフィルタについて説明していくことになる.
目次
- 8.1 はじめに
- 8.2 ヘテログラフ上の GNN
- 8.3 二部グラフ上の GNN
- 8.4 多次元グラフ上の GNN
- 8.5 符号付きグラフ上の GNN
- 8.6 ハイパーグラフ上の GNN
- 8.7 ダイナミックグラフ上の GNN
- 8.8 本章のまとめ
- 8.9 参考文献