第13章 生化学・ヘルスケア分野におけるGNN
はじめに
グラフは,計算生化学やヘルスケア分野で扱うデータを表現するのに広く用いられている. 例えば,分子や化合物は,原子をノード,それらを結ぶ結合をエッジとするグラフとして表現することができる. 2つ以上のタンパク質の間の物理的な接触による相互作用である, タンパク質間相互作用(PPI; Protein-Protein Interactions)もグラフと捉えることができる. さらに,医薬品業界では,複雑な疾患に対して特定の薬(薬物)を組み合わせて使用した場合に起きる有害作用を説明する,薬物間相互作用(DDI; Drug-Drug Interactions)もグラフとして表現することができる. グラフニューラルネットワークはグラフ特徴量の学習に強力な強みを持っているため,創薬,薬物類似性学習,ポリファーマシー副作用予測,服薬指導,疾病予測など多くの生化学・ヘルスケア分野に応用されている. 本章では,生化学・ヘルスケア分野の代表的な応用例を紹介する.
目次
- 13.1 はじめに
- 13.2 創薬
- 13.2.1 分子表現学習
- 13.2.2 タンパク質の相互作用予測
- 13.2.2.1 タンパク質構造のグラフ表現
- 13.2.2.2 相互作用予測モデル
- 13.2.3 薬物・標的間の結合親和性予測
- 13.3 薬物類似性学習
- 13.4 ポリファーマシー副作用予測
- 13.4.1 マルチモーダルグラフの構築
- 13.4.2 ポリファーマシー副作用予測モデル
- 13.5 疾病予測
- 13.6 本章のまとめ
- 13.7 参考文献